2016年

7月

01日

C R P S ?

Dr.ターナー

「みなさん、はじめまして。脳外科医師の、Dr.ターナーと申します。ここでは、CRPSという病気が抱えている問題について、私Drターナーと生徒のケイコさんとの対話を通じて、皆さんがCRPSをゼミ形式で理解する手助けをしていきたいと思います。このゼミを通じて、皆さんがCRPSを自分の問題と捉え、一緒に考えていくことができれば幸いです。」

 

 

ケイコ

「ちょっと先生、さっきから何ブツブツ言ってるんですか?」

 

 

ケイコさんは、日本の大学の医学部生で、将来自分の専門分野にしたい"痛み"について、海外から講師としてやってきたDr.ターナーから学ぶことにしました。Dr.ターナーは海外でも名の通っている、最先端の医学を学んできた医師です。

 

 

Dr.ターナー

「おお、すまないね。それでは本題に入ろうか。君は、"CRPS"という病名を耳にしたことがあるかい?」

 

 

もし、あなたがケイコさんのように質問された場合、

 

 

ケイコ

「えっ、そんな名前初めて聞いた〜。いったい、どんな病気なんですか??」

 

 

きっと、彼女のように反応される方が大半かと思います。

試しに、周りの人に同じ質問をしてみて下さい。

 

日本では、"たとえ医師をはじめとした医療関係の方に「CRPSという病気を知っていますか?」と質問してみても、同じ返事をされる"ことでしょう。

 

 

ケイコ

「(さっきから変な声が天から聞こえるけれど、スルーしておこう)」

 

 

Dr.ターナー

「うん、CRPSっていうのはね、Complex Regional Pain Syndromeの略称で、日本語でいうと複合性局所疼痛症候群という病名を指すんだ。"神経因性疼痛"の代表格がCRPSなんだけれど、これは、外傷をきっかけに交感神経が暴走して”尋常じゃない痛みが生じる”というのが主な症状なんだ。

 

 発症する場所は、なぜか手や足などの末端部分が多くて、一度発症すると、発症部位があまりに痛いため、可動域制限がかかって、運動が制限されてしまう。

 人は、動かさない部分はどんどん筋力が衰えていくよね。手足に運動制限がかかると、箸が持てなくなったり、歩くことができなくなってしまう。そういう体になると、また別の怪我をして、他の部位にCRPSが発症してしまうという悪循環が生じることすらある。

 

 要するに、この病気は、"とてつもなく痛い"がために、痛みの悪循環を招く病気といえるね。」

 

 

 ケイコ

「う〜ん…日本語名は難しくて覚えにくいから、CRPSって呼ぶほうが楽ね。ところで、"外傷がきっかけ"っていうのが気になったんだけれど、どういうタイプの外傷だとCRPSが発症しやすいの?」

 

 

Dr.ターナー

「結論からいうと、現時点ではCRPSに関する研究がまだ進んでいないから、どういうタイプの外傷がCRPSの発症につながるかという点については解明されていないんだ。ただ、多くの症例をみる限りだと、手術でメスを入れられたことによる外傷はもちろん、打撲等の軽微な外傷でも発症するケースがあるね。」

 

 

ケイコ

「あと、"尋常じゃない痛み"ってイメージしにくいんだけれど…もうちょっと分かりやすく教えてくれない?」

 

 

Dr.ターナー

「CRPSの進行度合いにもよるんだけれど、患者さんの声を聞く限りだと、"やけどのような痛み"とか、"剣山でさされたような痛み"、かなり進行が進んでいる方だと"ナイフで切り刻まれたような痛み"を訴える方が多いよ。

 痛みっていうのは、その性質上、他人に理解されにくいから、患者さんのみでなく、現場の医師にも色んな誤解も招きやすい。CRPSという病気は、非常に根深い問題を抱えているんだ。これについてはまた次回に話すことにするよ。」

 

 

ケイコ

「(えっ、これってシリーズ物なの?)…わかったわ。」

                                                               つづく

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『メディカル朝日』 2010年11月号掲載
『メディカル朝日』 2010年11月号掲載

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2010年 12/3 朝日新聞夕刊掲載
2010年 12/3 朝日新聞夕刊掲載